実利行者の足跡めぐり

木曽御嶽 三の池

長野県木曽郡木曽町三岳  2009年9月7・8日
三の池は実利行者が出家するきっかけになった場所といわれ、何時か行ってみたいと思っていました。御嶽山に静寂が戻るシーズンの終盤を待って出かけました。(以下は A・マリ ブッシイ著 『捨身行者 実利の修験道』 角川書店 1977年発行 p31~32より)

これは実利教会に集まる信者の老人(8名)から聞いたことであるが、土地の人々に信じられている話がある。行者が25歳の時、坂下の12人の信者と一緒に、黒沢口登山道の千本松で行われる御嶽教のお座立て(託宣儀礼)に参加するために、御嶽山に登ったという。その時の託宣に三の池の竜王が出て、次のように告げたという。「自分は夜中に三の池の面に姿を現すから、自分の姿を見たいものは、夜中に登ってこい」このすごいお告げを聞いたものは誰も恐ろしくて登ろうとするものはいなかった。ただでさえ物凄い山上湖の三の池である。そこへ夜中に出現する竜の姿を見に行こうというのは、余程の豪胆でなければできることではない。一同黙していると実利が進み出て、「誰も行かないのなら、自分が会って来よう」といって、驚く人々を尻目に、夜中一人で頂上近い三の池まで登った。彼はそこで青竜王にあったらしいと人々はいう。らしいというのは、明け方に実利は山から降りてきたが、待っている人々には一言も口をきかなかったからである。何を聞いても黙って何も語らなかったが、それから急に彼は出家したのだという。このような神や霊との出会いについては、昔から誰にも語ってはならず、もし語れば即座に死ぬといわれている。したがって彼が沈黙をまもったということは、むしろこれが事実であった証拠だと信じられているのは無理もない。おそらく実利にとっては竜王との会見は現実であり、その異常体験が彼を優れた修験者へと廻心させたものといってよい。したがってこれはまことに神秘な出家であり、のちに那智の滝に捨身入定する運命は、この時定まっていたように思われる。(以上)


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三の池 (白竜小屋より)

三の池は標高2720m、水深が13.3mあり、このような水深を持つ湖としては日本最高所の湖といわれています。池の水は御神水と呼ばれ酸性で腐る事がなく、様々な効能があるとされて大勢の人が水を汲みに訪れます。



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木曽御嶽のような3000m級の山に登ったのは、私にとって今回が初めての経験でした。御岳ロープウェイを利用して、ロープウェイ飯森駅~黒沢口七合目~八合目~九合目~九合半~頂上剣ヶ峰~二の池で一泊~賽の河原~白竜小屋~摩利支天乗越~飛騨頂上五の池小屋~三の池を周回~三の池の畔へ到着いたしました。この日は登山者が少なく三の池には誰もいませんでした。そのおかげで、一人静かに三の池のすべてを満喫することができました。三の池から八合目までは下りですが途中三ヶ所ほど沢を横切ります。一度沢の底まで降りてまた登り返さなければならないのが大変でした。木の階段が設置されている所はよいのですが、僅かですが残雪のあった所では足場が不安定で、おまけに対岸の登山道を見つけ難く思いのほか苦労しました。夜中に黒沢口の千本松から、おそらく、この道を通って三の池まで登って行ったであろう実利行者の姿を思い浮かべながら、黒沢口八合目を目指して歩きました。八合目からは登ってきた道を降りて、御岳ロープウェイ飯森駅へ無事下山する事ができました。しかし、この山行ではかつて無い悔しい経験をいたしました。それは荷物を少しでも軽くするために、普段は使用していなかった予備のカメラを持って行ったことによるものです。シャッターのトラブルにより、十数枚も連続で全く写っていなかったりと惨憺たる結果でした。フィルムに記録されていたのは僅か1割余りでした。予備のカメラを持って行くことに対し一抹の不安はありましたが、体力に余裕がない私は少しでも荷物を軽くすることを選択したのでした。一日目はガスのため思うような撮影ができませんでしたが、二日目は晴天になり、撮影にも手応えを感じていただけに残念でなりません。とんだ「予備」のカメラでした。




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浅間山方面の朝焼け  二の池新館前より



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賽の河原と剣ヶ峰  左側に白っぽく見える建物が二の池本館、右側は二の池新館


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賽の河原より摩利支天



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五の池と摩利支天  五の池小屋より


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四の池

東側の火口壁が崩れ湖底は湿原となり、その中を東に向かって小さな川が流れています。この流れは東の端より滝となって落ち込み、幻の巨大滝と呼ばれています。幻と呼ばれる由来は、水量が少なくなったりガスに隠れると見え難くなること、さらに見ることができる方角が御岳ロープウェイの山頂駅、飯森高原駅方面に限られていることのようです。遠くに見えるのは開田村西野。


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黒沢口八合目女人堂より御嶽山  赤い実はナナカマド、秋にはすばらしい紅葉が見られます。


御嶽再訪

2010年8月27・28日
昨年に続き再度御嶽山に登りました。今年は昨年登った黒沢口登山道と比較するつもりで王滝口登山道を登りました。田の原~八合目~九合目~王滝頂上~剣ヶ峰のルートです。黒沢口登山道と比べるとやや変化があり、急な登りも少し多いように感じました。結局経験の浅い私には、どちらのルートを登るにしても案内されている時間より五割ほど多く費やし、厳しいことに代わりありませんでした。今回は昨年記録されていなかった場所を撮影する目的で訪れた訳ですが、残念ながら度々ガスに遮られ思うように撮影できませんでした。しかし、下界の猛暑から逃れおまけに鈍った躰に刺激を与えることもできて、以前にも増して御嶽山の魅力を知ることができました。

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剣ヶ峰頂上

標高3067m、あいにくガスがかかっていますが左が一の池、右奥が二の池です。一の池に降った雨は二の池へ向かって流れ下ります、そして二の池を満たした後二の池本館の脇にある谷を流れ下ります。二の池の後方にかすかに見えるのが賽の河原です。



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朝焼け  二の池本館裏手より南アルプス方面。


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剣ヶ峰  二の池本館前より。



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賽の河原より摩利支天

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岩桔梗



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三の池  標高2720m、季節やその日の太陽の位置によって湖面の色が変化します。白竜小屋より。


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白竜小屋の霊場  御嶽山にはいたるところに霊場があり、石碑や石像、祠などが建っています。この霊場は三の池を背にして建てられていますが、長い年月を経ているせいか辺りの景色になじんでいてあまり違和感を感じません。



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二の池の万年雪と剣ヶ峰  二の池 標高2905m、日本で最も高い場所にある高山火口湖と紹介されています。


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