実利行者の足跡めぐり

和歌山県東牟婁郡北山村大字七色　　２００７年１１月１２日
七色ダム右岸から３００m程下流に再建された経塚です。平成６年（１９９４）９月の台風２６号の出水により、以前の社殿や屋敷が跡方もなく流出してしまったようです。幸いご神体の塔石が半年後に発見され平成７年７月に再建されました。

ご神体の塔石　　梵字の下には妙法蓮華経塔、左下に実利と花押が刻まれています。流された際についたと思われる無数の傷跡が生々しく残っています。

経塚の対岸（三重県熊野市）　　右手に七色峡園地が見えます。　２００７年１１月１２日撮影

再建されていた経塚ですが、大変残念なことに平成２３年（２０１１）８月の台風１２号の出水により経塚は再び流されてしまいました。今年の４月下旬『き坊の棲みか』の大江氏より、ブログ『熊野写真記』に経塚が流失したことが出ているとお知らせをいただき、初めてこの事態を知りました。
『熊野写真記』　七色ダム下流　http://blogs.yahoo.co.jp/kumanophoto_ki/64225683.html
画像を見ると案内板の建っていた踊り場はもとより、後方にあった鉄筋コンクリートの擁壁、階段も根こそぎ崩れ落ち、むき出しになった岩盤の上には残骸が残っています。恐ろしい破壊力です。山の中腹には祠の石積みが僅かに残り、無残に壊れた屋根が木にひっかかっています。祠の石積みの残り具合を見ると、あと僅か水位が低ければ助かったのではないかと思われ残念でなりません。石積みの中ほどには新しい樒（シキミ）が手向けられている様子で、この光景には大変心を打たれました。僅かな望みを抱き６月８日、大台ヶ原の帰りに経塚の跡を見てきました。崩れ落ちた擁壁や階段の残骸は片付けられ、むき出しになっていた岩盤の上は盛り土によって整地されていました。川の両岸では大規模な復旧工事が進められていました。ご近所にお住まいの方にお話を伺ったところ「平成６年の台風の時は経塚はもっと低い場所にあったために流されてしまった、後に塔石が見つかり高い場所に再建されたが、このようなことになるとは思いもよらなかった。今回の出水は以前とは比較にならない程すごかった、残念ながら今回ばかりは塔石は見つからないのでは」と仰っていました。あまりの惨状に撮影する気にもなれず、いつの日か塔石が見つかることを祈って帰ってきました。なお、川の中州にある磨崖仏は以前は近くまで行くことができましたが、今度の出水によって川の流れが変わってしまい、簡単には行くことができなくなっていました。そのため無事かどうか確認はできませんでしたが、磨崖仏のある辺りの岩はあまり変化がないようでしたので、おそらく無事ではないかと思います。

ブログ『熊野写真記』七色ダム下流では、災害後の手つかずの貴重な画像を拝見することができました。また、拙ページを紹介していただきましたこともあわせ心より感謝いたします。

２０１２年６月３０日

平成２５年（２０１３）６月１日、「北山村 筏師の安全を願う石塔台風で流失 村出身者が発見」という記事を見つけました。期待に胸を躍らせリンクを開くと、それはまぎれもなく七色の経塚の石塔発見のニュースでした。記事には小さな写真が載せてあり石塔と一緒に発見者が写っていました。しかし写っている石塔は裏面のようで文字が確認できませんでしたが、石塔の形や記事にある文字の説明で確信が持てました。発見者は北山村竹原出身の赤根氏で、岩に彫られた仏像を調べていて見つけたとありますので、おそらく高岩の磨崖仏を調べる際に偶然石塔を見つけられたのだと思います。見つかった場所ははっきりしませんが、岩に彫られた仏像を調べていて見つけたこと、河原から引き上げたことなどから推察すると高岩の磨崖仏の対岸（北山村側）の河原ではないかと思います。それにしても磨崖仏の近くで石塔が見つかったことは驚きでした、そして何か運命めいた物を感じました。ちょうど６月１０日前後に上北山村から下北山村へ出かける予定でしたので、さっそく北山村役場に石塔の所在と確認が可能かどうかを問い合わせました。その結果、発見された河原の護岸の上の空き地に仮に安置してあるので、見ることは可能という返事をいただきました。６月１１日の午後４時ごろ現地に到着、幸運にも先程まで降っていた小雨も止んで少し明るくなってきました。石塔が欠けたりしていないか気がかりでしたが、そのようなことも無いようです。文字の部分もほぼ以前の状態を保っているように見えます。ここまで確認したところでまずは一安心、無事に見つかって本当に良かったとつくづく思いました。発見者の赤根氏には心より感謝いたします。

熊野新聞オンライン　ニュースアーカイブ　2013年04月26日「筏下り安全祈願の石塔 流失から１年６カ月ぶり発見 北山村」の記事

２０１３年６月２０日

平成２５年（２０１３）３月４日に無事発見された石塔　正面
高さ約１１０cm、幅約６０cm、奥行き約４０cm　　　　２０１３年６月１１日撮影

石塔右側面




石塔左側面